■机をステージに

学年一のお調子者・山本寛暁(通称カンサイ)とまるで性格が反対のような無口な高屋恵は、
数人の同級生と“マーガレット”というバンド活動をしている。
新入生歓迎ライヴでゲリラ参加したため、教師たちに目をつけられる存在となっていた。
いつも周囲を和ませるような笑顔の佐藤真紀は、小さな悩みを友達にも相談できずいつもニコニコ笑っているため、
”悩みがなさそうでいいね”と友達に言われてしまう。
そんな真紀は、無口な高屋が作るキレイな歌が気になっていた。
カンサイは真紀のことが好きだ。といってもいつも冗談の様に大勢の前で真紀にちょっかいを出すので、誰も本気にしていない。
かねてからマーガレットにはキーボードが必要だと感じていたカンサイは、真紀がピアノを弾ける事を知ると、
真紀にバンドのキーボード担当になって欲しいと話を持ち出す。
だが、高屋は“マーガレットには女はいらない”と言う。
構わずカンサイは真紀をマーガレットに誘うが、そんな真紀に高屋はなにかと冷たい。
水面下では密かに終業式にゲリラライブを行う計画をたてていた矢先、
カンサイのカンニングが教師に見つかり、カンサイは自主退学を言い渡されてしまう。
カンサイが自宅謹慎中のさなか、マーガレットは周囲や先輩の期待を受けて終業式ライブのミーティングを行うが、
カンサイのいない学校で一番つらい気持ちを背負っていたのは高屋である事を、真紀は気付いていた。
自宅謹慎が解けたカンサイは、“退学して神戸に行く”とマーガレットのメンバーに打ち明ける。
高屋は「終業式ライブはやる。退学なんて怖くない」と言い張る。
そんな高屋に退学になるのは自分ひとりでいいとカンサイは叫ぶ。メンバーはそれぞれの想いをぶつけ、泣き崩れる。
翌日、高屋も真紀も学校を欠席したその夜、真紀は酒に酔ったカンサイ達に夜の海岸に呼び出される。
そこで、酔ったカンサイに真紀は、「高屋の事を待っていてくれ。あいつは真紀ちゃんが好きだから」と言う。
カンサイは既に、高屋の気持ちを見抜いていたのだ。
カンサイが神戸に発つ、終業式の当日。
式の最中にあちらこちらからマーガレットの登場を期待する声が。
その声は次第に大きくなり、来るはずも無いマーガレットを呼ぶ声はいつしか涙まじりの叫びになっていた。
新幹線の駅のホームでは、出発間際のカンサイが高屋に「おまえになら真紀ちゃんやっからよ。オレにはわかってる」と言う。
高屋が言い返そうとするとドアは閉まり、カンサイを乗せた新幹線は、線路の先へ消えていった。
終業式の放課後、高屋と友人の久志は学校の職員室を訪れ、
「マーガレットは解散しません。俺たち必ず卒業します」と言い残す。
教室に残っていた真紀と、高屋たちはカンサイの机を学校から持ち出す。
海沿いを歩きながら高屋は、「俺、スローバラードつくったよ。ピアノのソロで始まるんだ」と、
真紀に言うのだった。
そして、10月の文化祭。マーガレットははじめてスローバラードを唄った。   -終-