■his love

女子高に通う主人公は、毎朝通学の電車で見かける1才年上の男子校の清野さんにもう2年も片思いをしている。
共通の知人を通して主人公は清野さんと二人きりで放課後、会うことになる。
そこで、清野さんから、自分は中学の頃から想い続けている「羽鳥さん」の存在を聞かされる。
清野さんは思った以上にいい加減で軽い男だった。
とはいえ忘れようにも清野さんが忘れられない。
そんなある日、清野さんが毎日駅の改札口で”羽鳥待ち”をしていることを知り、
主人公は自分が風になって陰から清野さんを見たいと心に願う。
すると本当に、清野からは自分の姿が見えなくなってしまったようなのだ。
風になった主人公は、清野が風邪で熱のある中、羽鳥さんの通う学校の校門で、
下校する羽鳥さんを雪の中待ち伏せする姿を目の当たりにした。
校門で待つ清野さんの前を素通りして去っていく羽鳥さん。
”あいつもオレのことが好きなはず。信じてる”
清野さんは風邪が悪化する中、駅でひたすら羽鳥さんを待った。
風になった主人公は、駅でうずくまる清野さんの恋を切実に見守った。
その時、清野さんの目の前には羽鳥さんが戻ってきた。
清野の願いどおり、羽鳥さんもずっと清野を気にしていたのだ。
清野の姿をいつものように駅や通学中の電車内で見かける主人公。
今までのいい加減な清野の姿はそこにはなかったが、
初めて清野と口を聞いた日から、ずっと彼の恋を見守っていた主人公の顔は、
訪れる春の風のようにすがすがしいものだった。   -終-