■あの夏が海にいる

この夏に出会った2歳年下の和実くん
湘子は和実くんとの楽しい夏休みを過ごしていたが、夏が終る頃和実くんは「それ以上やさしくしないで」と、湘子のもとを去ってしまった。
以来、文化祭のバンドの練習も身につかないほどの湘子は、和実の事ばかり考えていた。
ドラムを叩いて心を紛らわそうとした湘子だが、「あの海にいけば和実くんがいるかもしれない」
と、友達の手を振り切って一人海にやってくる。
そこで湘子は偶然、あの夏には見た事ないような、和実の別の姿をみかけてしまった。
バイクの後ろに女の子を乗せる和実の姿を・・・。
その視線に気付いた和実だったが、湘子はもうそこにはいなかった。
10月の文化祭、湘子は体育館の舞台にいた。
ステージで、夏の思い出をふりかえる湘子。
過去にばかり吸い寄せられた姿はもうそこにはなかった。
湘子をくるしめたあの夏の思い出は、いつしかやさしい思い出へとかわっていた。   -終-