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コラム1.「七里の妹の友達」
~「みんなで卒業をうたおう」は実話?!~




 紡木さんの漫画はどれも大好きだけど、特に好きな1つに「みんなで卒業をうたおう」という作品がある。

 ■みんなで卒業をうたおう
もうすぐ卒業を迎える高校3年生『石川なっちゃん』。
そのなっちゃんに憧れる一人の高校1年生。
その子の同級生の兄がなっちゃん先輩とクラスメイトであることがきっかけで、なっちゃん先輩に顔を覚えてもらう事ができた。
”3年生は皆かっこよくて面白くて仲良くてすごい、反面、自分達のクラスはつまらない。”
・・・そんな風に思っていた主人公は、思わず「先輩が卒業してからどうすれば楽しくなりますか?」となっちゃん先輩に言ってしまう。
しかし先輩からは逆に、「お前らあと2年もあんじゃん、うらやましい」と言われた。
そんななっちゃん先輩、実は美術の先生に憧れ、何よりこの学校が大好きでたまらなかったのだ。
そんな先輩達の校内卒業ライブを通して学校中にあふれる、「卒業」への想いを描く作品。




主人公はこの漫画の中で最後まで呼び名がない。

唯一わかるのは、主人公の友達の名字が『七里』で、その兄が『なっちゃん』の同級生であること。

そんなことから、石川なっちゃん先輩は、いつしかその主人公をこう呼ぶのだ。

七里の妹のともだち


紡木さんが作品デビューしてから3年後、12作目となるこの作品で、紡木さんは初めて主人公の女の子に”名前”をつけなかった。

デビュー当時の作品で、名前をつけなくてもストーリーが進む作品は何点かあるが、 その作品にすら母親が主人公を呼びつけるシーンなどで名前が設定されている。

しかし、「みんなで卒業をうたおう」に登場する女の子は、最後まで名前がないのだ。
 

『七里の妹のともだち』は実は『紡木たく』本人ではないか。

自分だから、大切な想い出だから、ほかの誰の名前も付けたくなかったのではないか。

いつしか私はそう思うようになっていた。



あれから15年以上もの月日がたったある日、紡木さんの出身高校について知る機会があった。

神奈川県内のとある高校だという。

それは『七里の妹のともだち』が、卒業していく先輩を想い青春時代をすごした学校の配置とよく似ていた。
 
  「MCコミックス みんなで卒業をうたおう 57ページ(著者 紡木たく/発行 集英社 1986年5月15日第4刷 」)


校門から学校を囲む塀のつくりやゆるい坂になっている道。

校門の学校名プレート下にある植木。

塀の中にある外灯の位置。

校門入ってすぐの校舎入り口にある1階の雨よけ屋根。

どれをとっても同じだった。




また、この学校の後輩にあたる方から、紡木さんは6期生だという話を聞いていた。

紡木さんが6期生なら1年生の時に憧れていた3年の先輩達は4期生にあたる。

この漫画の中で、石川なっちゃん達も4期生なのだろうか。

漫画の内容的に、その話題に触れるセリフなどはなかったものの、 よく見ると・・・。

紡木さんのメッセージはこんな所にも隠されていたのだ。


「MCコミックス みんなで卒業をうたおう 48ページ
著者 紡木たく/発行 集英社 1986年5月15日第4刷 」



そう、石川なっちゃん達の卒業式は「第4回」。なっちゃんは4期生だったのだ。

それだけではなく、ゲタ箱に「4期生」という言葉が2つも描かれている。

偶然だろうか。

控えめながらもしっかりと「4期生への想い」を描き残していた紡木たくさん。

このキーワードに注目した時、

紡木さん本人が実際に憧れた先輩への強い想いを感じた。




「みんなで卒業をうたおう」は実話であると確信した時、 それを裏付けるように、ローマ字コメントでこんな言葉を見つけた。


さて 実はこれも本当の話だよ。
みんな本当にかっこよかった、これよりもっと。
大好きだった。
 」
「みんなで卒業をうたおう」35ページより


憧れの3年生たちと卒業ライブの思い出・・・。

なにより憧れていた先輩・・・、告白、愛用の定規を貰ったエピソード・・・。

どこまでが本当の話かはわからない。






ただ、”大好きだった”この学校で、

紡木さんはきっと恋に胸焦がす青春時代を送っていたに違いない。





 

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