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コラム3.
「ホットロード」はここにしか存在しない
~ドラマ「終わらない夏」盗作騒動について~



 ■ドラマ「終らない夏」

オンエア/1995年7月~9月 日本テレビ系列
出演者/瀬戸朝香・秋吉久美子・大浦龍宇一ほか
主題歌/「Hello again」My little lover


ドラマの設定・台詞まわし等が「人気漫画”ホットロード”に酷似している」と視聴者からのクレームがテレビ局に相次ぐ。
ドラマの脚本に問題があり、「ホットロード」の設定・台詞が多数引用されている事が判明。
当初、脚本家梅田みかさん及び日本テレビ側はこの騒ぎを無視し放送を続けたが、回を追うごとに視聴者からのクレーム件数は増え、 テレビ情報誌に疑惑の投書が掲載されるなど騒ぎになる。
放送も終盤にさしかかった9月初旬、紡木たくさんおよび集英社側が無断引用を抗議。
事態を重く見た日本テレビ側は、最終回放送終了後にこれを認め謝罪。
今後このドラマは 『再放送・ビデオリリース・ノベライズ(小説化)しない』という話で和解となったといわれている。



数年前よりTVドラマの世界では漫画のドラマ化があたりまえになってきていた今日ですが、 引用・盗作の疑惑でテレビ局側が正式謝罪するケースは珍しく、 この場合、”内容が似てる”というあいまいなもの以上に、”セリフ”という台本に記される明確な証拠が テレビ局側謝罪という異例の事態に発展したのではと思われます。
このドラマは、瀬戸朝香さんの初主演作品であり、 正統派美人女優が不良役という事で当時とても注目されました。
また、雑誌Rayの人気モデル”松本莉緒”さんが、かつてアイドル”松本恵”として活動していた頃の 女優デビュー作でもあり、 さらに、V6井野原快彦と瀬戸朝香がこのドラマでの共演をきっかけに交際し 後に結婚した事もあって、いろいろな意味で話題性あふれるドラマでした。
未だに見ることができないのはこういった背景も影響しての事と思われます。


紡木たくさん側が抗議に至った点については、問題の酷似箇所を知れば知るほど・・・。
「ホットロード」のある1シーンに、和希と母親が言い争うシーンがあります。
和希が朝食時にちょっとした皮肉を母親に言うと、母親は和希の着ているガウンに向かって、

「なんでそれ着てるの?なんでいつも着てるの?ママの好きなやつとっちゃって・・・
キレイな色だったのにいつのまにか薄くなっちゃって・・・」


と、冗談のつもりで言い返した皮肉によって、和希を悲しませるシーン。
「終わらない夏」では、主人公・向日葵(瀬戸朝香)と母親(秋吉久美子)によって それとそっくりなセリフで演じられているといわれています。

また、春山が、絵里にだけ缶の紅茶をあげて、「おめーはいらねーよな」と和希に冷たく言い放ったものの、 結局は自分の飲みかけの缶を和希に渡す、春山のさりげない優しさが印象的なシーン。
これもまったく同じように、ドラマに登場するとのこと。
また、バイクにまたがり「オレの女にならない?」と、くどくシーンや、 出合った当初の第一印象がお互い最悪であり、「お前んち、家庭環境悪りぃだろ?」と 言い放つシーンもあるといいます。

さらには母子家庭という設定や、母親の恋人の名前が”鈴木”である点、 そして母親は彼の事を「鈴木くん」と呼んでいる点、 そんな未熟な母親を尊敬できずに呆れる主人公など、一致箇所が非常に多い。
設定が似てる以上に、このドラマが問題になった背景にはやはり”台詞”の引用だといいます。
引用箇所は数え切れない程あるそうですが、今見ることができないのはちょっと残念です。
(※追記(2005.3.5):映像入手しました。 コラム15にて一部抜粋しております。)


その問題となった脚本家・梅田みかさんは、もともと紡木たく漫画のファンであり、 影響を受けたとおっしゃっていたそうです。
梅田さんは後にフジTV系「お水の花道(財前直美)」、NHK「もう一度キス(窪塚洋介)」 日本テレビ系「よい子の味方(櫻井翔/嵐)」などの人気ドラマを手がけていらっしゃいます。



紡木さんの作品は、 こうして様々な場所で大きな影響を与えていたんだなぁと実感させられる事件でした。

ところで、この騒動のもう一つの側面には、ホットロードを強く愛する読者の力が テレビ局側の異例の謝罪に至る結果を導いたという事実があります。
自分の作品の世界を大切に想う紡木さん以上に、 「ホットロード」はここにしか存在しないという事を誰よりも痛感していたのは、 多くの紡木たくファンだったのかもしれません。





紡木さんの今現在、最後の漫画作品が1995年2月に別マで発表した「隆司永遠」。
このドラマが放送をスタートしたのは同年の7月。時期が同じなのもちょっと気になります。
紡木さんは「机をステージに」などの作品に”続き”があり、 機会があれば第二部を作品化する事を明言していました。「message」のページを参照ください)

しかしそれらの続編が実現することはないまま、事実上、 この事件が起きた時期以降、紡木さんの漫画作品(イラスト作品を除く)の執筆活動が 確認されることはありませんでした。

紡木さんの心の傷―――。
私達には到底わかるものではなかったのでしょう。

紡木さんの癒せぬ傷に気がつかないまま、 無神経にも当時の私は、新作に期待する日々を送っていました。
今の私達読者が紡木さんに伝えられる事は、 私達にとっての「ホットロード」は、紡木さんの描く「ホットロード」以外ありえないという事。
ずっとこの想いは変わることがありません。


紡木さんは後に結婚され幸せな家庭を築かれていらっしゃるという話を、 インターネットのあちこちで見かけます。
私はこれらを、未確認情報の”噂”として受けとめていますが、 きっとそうであることを、心から祈りたい気持ちでいっぱいです。




※上記内容は事実確認を行ったものではありません。
内容についてテレビ局や出版社へのお問い合わせはおやめください。
訂正箇所ございましたらご指摘願います。



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